「ドリームガールズ」:夢はきっと、美しくなどない [映画]
夢を抱かない人間はいない。だが同時に、挫折を知らない人間もまた、少ない。
映画「ドリームガールズ」は1960年代から70年代にかけてのアメリカを舞台に、3人組の黒人の女の子達が、ミュージックシーンにおいて様々な挫折も経験しながら、スターへの階段を駆け抜けていく物語である。R&B、ソウル、ディスコと当時の様々な音楽背景も取り入れながら、実在のミュージシャンたちの実話も交えて語っていく。ミュージカル映画ではあるが、その歌はほとんど実際に彼女たちが歌った当時のヒット曲という設定で歌われるために、導入への障壁は低い。
ストーリーは、歌唱力に恵まれながらもルックスと性格上の問題でリードシンガーを下ろされるエフィと、個性がないと言われながらもそれゆえに何でも歌いこなせる声と美貌を持ったディーナの二人の運命を中心に展開する。それはそのまま、エフィを演じる無名の新人ジェニファー・ハドソンと、5度のグラミー賞に輝く大スターのビヨンセ・ノウルズの演技合戦でもある。
彼女たちは共に夢を抱いている。尽きることのない夢。飽くなき成功への欲求。けれどもそれは決して彼女たちがどん欲なのではなく、ただ純粋に歌うことが好きだからである。一方で彼女たちは常に挫折も経験する。黒人であることも、歌をパクられることも、リードシンガーの交代も、恋に破れることも、望む仕事が出来ないことも。
「それでも手に入れたい夢がある」 その言葉の裏にある苦さ。
物語の中盤で、成功の坂を転がり落ちようとするエフィは、失おうとする恋にすがりついて激しく歌う。長く続く苦悶のの歌声。目をあるいは耳を背けたくなる醜さと紙一重でありながら、それは聴く人の心を叩く。
挫折を知らない人間はいない。本当に叶えたい夢を掴むことが出来る人とは、挫折しないのではなく、挫折してもなお扉を叩き続ける、醜さと悲しさを持った、ほんの一握りの人間なのかもしれない。
(800字批評シリーズ:795文字)
公式サイト:http://www.dreamgirls-movie.jp/top.html
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