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「マリー・アントワネット」:女の子には可愛い毒がある [映画]

 女の子には可愛い毒がある。言い換えれば、毒のない女の子なんて刺のない薔薇も同じ。何も面白くなどない。そう思わないだろうか。
 映画「マリー・アントワネット」は、女性監督ソフィア・コッポラの手による映画である。きちんと時代考証もした上でマリー・アントワネットの生涯を、その結婚前夜からベルサイユを去るところまで描きつつも、ドレスや花やお菓子などのパステルカラーを随所に配置し、歌入りのロックやポップスもふんだんに使う。
 主演のキルティン・ダストの表情も印象的だ。いかにも楽しそうに開放感たっぷりに演じている。まるでこれが、女性監督と旬の女優との、楽しい女の子同士のお茶会でもあるかのように。
 それでいながらストーリーは、密かな毒に満ちている。いい人ではあるが、夫としては頼りない王太子ルイ。そのうまくいかない結婚生活の憂さを晴らすかのように、マリーはドレスやお菓子に夢中になる。その一方で娘が生まれれば「みんなは残念がったけど、私にとっては可愛い」と印象的な台詞を呟き、一時の愛人フェルゼン伯爵は、顔はいいが軽薄な男として描かれる。女性なら誰もが感情移入せずにはいられないが、一方でそんな自分はいかにも女だなとため息をついてしまう。そのような映画である。
 日本語のコピーも秀逸である。「恋をした、朝まで遊んだ、全世界に見つめられながら。」 そこににじみ出る軽薄さ、一方で、でもいいじゃないか、それは女の夢だと思わずにはいられない。まさにこの映画の本質を突いたコピーのように思う。
 映画は夢を見るものだろうか。それとも現実を見つめるものだろうか。この「マリー・アントワネット」には、そのどちらもがある。女の子は可愛い。女の子には毒がある。どちらも本当のことだ。食べたら太ってしまうケーキのように。触れたら刺さる薔薇の刺のように。
 でも手を伸ばさずにはいられない。だって、それが女ってものだから。

(これは新聞の批評のように800字で書いてみようという、大学の課題で提出した原稿です)


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男性人形

大人の隠れ家。無制限生撮りOK(人・ω・) http://www.b8y.in/
by 男性人形 (2012-07-28 06:55) 

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