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ある大学院生の一日:M1の4月 [雑記]

 最近は毎日が充実しています。どれくらい充実しているかというと、毎日のように落ち込んでは倒れるように眠って次の日の朝には解決法が頭に浮かんでいるというくらいです。大学院の生活はとても楽しいものです。
 しかしハードなのはハードなので、あんまり趣味の読書などは出来ていません。したとしてもそれは心の休息を取るためで、ブログに書けるようなネタを練るものじゃない。そういうわけで最近はあまり更新が出来ていませんでした。
 けれど大学もGW休みに入り、GW明けのプレゼン用のレジュメも書き上げたので、ここらで一つ久々に更新でもしてみようかと思います。ネタがないので、大学院生活をネタにします。

 ここに出てくる登場人物はすべて実在の人物、および実際にあったことを元にしていますが、当然のように脚色・誇張を加えています。私の目から見た、ヒジョーに身勝手な大学院サバイバル記録です。
 くれぐれも本気で読まないでください。


5:30 起床。今日は朝の9時から夜の9時まで講義とゼミがある、1週間で一番ハードな日。それでも目が覚めてしまう自分が憎い。
6:30 ネットでニュースをざっと眺めながら、お茶とカロリーメイトの朝食を取り、カバンの中身をチェックして着替えて家を出る。
 電車の中では寝るか勉強のための本を読むか研究のための思考をするかの毎日。朝は大抵寝ることを選択するのだけれど、今日は頭の中に様々な思考が浮かんであまり眠くない。どうやら間近にせまっている合同ゼミのプレゼンに対して気持ちが動き始めているらしい。今日はその前座として800字の研究計画を提出するのだけれど、はっきり言って全然満足できることは書けなかった・・・。

8:30 大学着。正確には大学の最寄り駅に着く。ここから大学までの道はいわゆる学生街。各種飲食店や学生向けの店がずらっと並ぶ、ここまでベタな学生街も今時そうないだろうという学生街。そしてそこを歩いていくのは、どこかだらしない服装をした、社会人の目から見れば隙だらけというやつの、絵に描いたような大学生達。しかしこの風景は嫌いじゃない。
9:00 1限目の講義開始。私は大学時代からこの1限目講義というやつは鬼門なのだが、今日はまあまあ集中できた。やはりプレゼンのことで頭が活性化しているのがよかったらしい。・・・が、そうやって気を抜くと人間失敗するということをこの後思い知る。


10:40 2限目の講義開始。これは大学院の講義ではなく、学部講義に潜り込んでいる。研究室の先生から「学部の授業も積極的に取るように」と薦められたこともあるが、この講義は特別である。というのも私の研究しているテーマに一番近い研究をしているのが、この講義を担当している助教授さんだからである。この大学では教授のみが大学院を担当しているので、助教授さんとは本来接点がない。というわけで私はストーカーのようにこうして学部講義に潜り込み、講義の後は必ず挨拶し、4回生のゼミにも潜り込みと、「好感度あげ作戦」を着々と実行している。別名「頼まれたら断れない性格を見込んでの押しかけ迷惑大作戦」であることは、ここだけの秘密である。
12:10 というわけで講義が終わった後は当然ご挨拶に向かう。お忙しいはずなのに、大学院の合同ゼミに行こうかと言ってくれる優しさにつけこんで、自分の研究計画を「読んでください!」と差し出す。こんなの全然書けていないーと落ち込んでいたことは、ここでは棚上げしている。というか、そのようなことで躊躇していては、大学院生活は生き残れないのである。
 頼まれたら断れない助教授さんは真剣な目つきでそれを読んでくださり、「ところで切り口はどこなの?」という質問を。私はそれに自分なりの答えを返すが、ああ、さくっと弱いところを突かれたッと心の中では思っている。これは本当に自分の(心の底から)やりたいことなのか、まだ確信が持てていなかった。それでも口は勝手に動き、それらしい答えを返すものの、「それって面白いのかなぁ」という助教授さんの素朴なつぶやきがさらに追い打ちをかける。落ち込む。


12:20 それでも食事はしないといけない。今日は特にこのあと夜9時まで戦わなくてはならないのだからッ。というわけで、大学近所のサンドウィッチ屋さんでサンドウィッチを買う。これを500mlペットボトルの紅茶飲料で流し込むのが最近の昼食である。
 飲み物は朝に500mlペットを買って、それを1日かけて飲むことを日常にしている。いろいろ試した結果、砂糖が入っているものだと結局喉は渇くのだけど、頭を使っているせいか無糖のお茶では今ひとつ力が出ない。だから砂糖入り紅茶飲料が最近の定番。ちなみに時々追加でココアを買ってドーピングしたりもする。

13:00 3限目。やはり学部授業。これは直接私の研究テーマとは関係ないものの、目先が変わって面白い授業である。真剣にノートも取る。昨年の夏、大学院を受験しようと決めた時は、いかに自分が手を使って字を書く生活から離れていたかを実感した(ノートに書いた文字がはっきり言って読めるものじゃなかった)が、今ではすっかり勘を取り戻している。つもりである。
 ちなみにそうやって講義に集中したのは、落ち込みを回避したい現実逃避の心境が働いていたことは否定できない。
14:40 4限目。どこまでも学部授業。といってもこれは少し意味合いが違う。この後の5限との続き講義で、まず学部の講義を聴き、その後教授の個別研究室に言って講義内容について質問や議論を行うという形式になっている。だから当然必ず出席せねばならず、一言たりとも聞き逃してはいけない。
 でも基本的に聞きやすい講義である。先生は昔気風の大学教授といった方で、非常に話が洗練されている。ほとんど板書をしないのでそれなりの集中力が要求されるが、この後の講義のために一言一句聞き漏らさずにノートに取る。あと大切なのは、先生の冗談にはちゃんと笑うこと。
 ・・・この先生はほとんど表情を変えず、強面(じっと見るとそう怖いお顔でもないのだが)でただひたすらに淡々と講義されるため、せっかく冗談を言っても誰も笑わないという状況がある。私はそれはいけないと思う。この先生は結構ユーモアのある方だと思っている。だから自分だけでも、声はあげずとも顔はちゃんと笑うことにしている。・・・ただし、たまにノート取りとのタイミングの兼ね合いで失敗する。難しい。笑いというものはタイミングが非常に重要である。関西人として笑いのボールを受け損ねる事は、非常に悔しいことである。要修行。


16:20 5限目。そういうわけで、先生の研究室に行っての質疑応答。この大学院講義を取っているのは私と、あとは違う学部から来たドイツ哲学を専攻している方なので、目先が変わってとても面白い。先生も基本的にとても優しい方なので、まるでのんびり午後の紅茶でも飲みながら話をしているような雰囲気で、質疑応答及び議論は進行する。
 ただし今日は駄目だった。最初に出した質問(講義を聞いている段階でチェックして用意していた質問)はちゃんといいところを突いていたらしく、よいリアクションがもらえたのだが、その後がどうしても駄目だった。この後に合同ゼミが迫っていることもあり、落ち着いた雰囲気の中で、先ほどの落ち込みが頭をもたげる。つい気持ちがそちらに行ってしまう。受講生が2人しかいないため、交互に発言していかないと間が保たない。まずいと思い始めたら悪循環である。
 そんなわけで後半はどうも盛り上がりに欠けてしまった。反省する。来週こそは頑張ろうと心に誓いつつ、時間になったので退出してエレベーターに乗る。

17:50 エレベーターの中で大学院も担当している教授さん(私の担当ではない)と乗り合わせる。学生としてはとても気を遣う状況である。幸いというべきか、他の団体さんがどやどや乗り込んできたので、一言話を交わす程度で済んだ。しかしほとんど接点がなくても顔覚えられているんだなーとそういう部分に感心半分、恐れ半分。
 エレベーターを降りて大学院棟への移動をしている途中で、遥か先に先ほどの教授の後ろ姿を見る。歩くの早ッと思いつつ、急いで追いかける。やっぱり学生が先生のあとに入室するのはまずかろうという、なけなしの常識が。でも早っ。・・・ただし結果として、途中で先生が顔見知りの方に会われたらしく、立ち止まって会話を始められたので追い越すことが出来た。
18:00 合同ゼミが行われる教室に入る。すでにほとんどの人は出てきていて、挨拶。提出する研究計画書は教授の数だけコピーしなくてはならないと聞き、慌てて院生用のフロアにあるコピー機に向かう。先に同期で同じ研究室所属の人がコピー機を使っていたので、待ちながら世間話。自分の研究計画を「面白いのかなぁ」と言われて落ち込んだ話をして、「そんなことないですよ」となぐさめてもらう。こうやって愚痴を聞いてもらうことはとても重要だと思う。同期の人間というのは当然ライバルでもあるのだが、それ以上に同志である。とても貴重な人間関係だと私は思っている。


 この合同ゼミとは、大学院の6研究室(院生が居ないところもあるので、正確には4研究室)合同で、2週に1度集まってM(修士課程)の人間が順番に自分が取り組んでいる研究の発表を行っていくという形態である。今回はM2(修士2回生)の人が発表を行う。M1は再来週かそのまた次である。とはいえ研究計画書を提出させられたり、明日は我が身であるので気は抜けない。どのように発表を行うのか、そしてどういう部分が突っ込まれやすいのか、それもまた大学院においては重要なスキルである。実は4回生ゼミに潜り込んでいるのも、そういう勉強も兼ねている。
 さらに言えば、発表に対して自分がどんな突っ込みを出すか、質問を出すかも当然チェックされている。「M1は積極的に質問するように」と言われたので、積極的に質問する。私は大抵、微妙にずれているというか、重箱の隅に向かって突撃していったり、重箱の外側に向かって果てしなく飛躍していったりするので、かなりダメダメである。まあこういう人間もいてもいいかなくらいのポジション、あと突撃隊長体質ではあるのだが、ここはこれから勉強して修正していく部分だと思っている。今回のゼミでもD(博士課程)の人はさすがにいい質問を、さらに相手の研究を手助けするような上手いというか気配りのある質問をしていて、心密かに深く尊敬した。自分もいつかああなりたいと思う。

 プレゼンは4人で途中休憩が入る。その間に担当教授を捕まえて、「助教授さんにも研究計画を見せたんですけど・・・」という報告をする。担当教授さんは助教授さんの指摘を追認して、さらに色々ヒントをくれた。うちの担当教授さんは基本的に「優しい」(括弧付きの)方ではあるのだが、年の功なのかそもそもなのか、ちょっと、なんというか、対峙する時に常に深読みを要求する方である。なにせ私が入学して入試以来訳半年ぶりに再会したときに、まず最初に「入学しないのかと思ったよー」と言った方である。ついでにGWの狭間の講義を休講することについて、「ゆっくりなさるんですか」と聞いたら、「うん、ゆっくり研究するー」と答えた方でもある。
 ともあれ「ヒントをくれた」というと、助けてくれたように聞こえるが、実際は奈落の底に向かって後押しされたことに他ならない。つまり、このままではダメってことである。
 続きのプレゼンを聞きながら、質問もしながら、必死で考えをまとめる。そしてプレゼンが終わったところで、担当教授さんに向かってなけなしの最後の突撃「私は(切り口を)**で行こうと思います!」をするが、「それは既に沢山やられているからねー」とあっさり撃墜。・・・そんなものである。大学院生活とはそんなものである。
 ちなみに再来週のGW明け発表の順番であるが、くじ引き予定のはずが50音順ということにあっさり決まる(くじ引きの用意を何もしていなかったんだな・・・)。「ってことは私が一番最初じゃないですか!」と叫ぶも、二人の教授に二人して生暖かい視線を送られただけだった。担当教授さんはいつものようににこにこしながら、「アルファベット順でも・・・同じだねー」と。・・・ひどい。
 それでも前日に予行演習をしようと言ってくれる。基本的に「優しい」方なのである。ところで前日ってことは、そこで指摘されたことを1晩で消化なり解決しろってことですかとか、そういう部分に突っ込んではいけない。担当教授さんはGW中はこもって自分の研究に没頭されるのである。「(連休中でも)メール投げてくれたら反応するから」というのは、多分とても優しいお言葉なのである。


21:30 疲れをかかえてへろへろになりながら帰路につく。帰りの電車の中で同期の人と一緒になるも、みんなそれぞれに疲れていてろくに話も進まない。下手に話しても愚痴を通り越して果てしなくネガティブ。そういうわけで、「じゃあまた」と別れ、長い帰路につく。
 一人車中に座って目を閉じ頬に手を当ててうつむきながら、本当は寝ているくらいの体力状況にもかかわらず、頭の中は必死に糸口を探している。「もう私はダメだー」とか思う。大学院辞めようかとか思う。でも考える。何か答えはないかと考える。
 はっきり言って、大学院生活とはそんなことの繰り返しである。

23:30 帰宅。夫が最寄り駅まで迎えに来てくれる。こういう時に家族(家庭)を持っているって本当にありがたいなと思う。お気に入りのぬいぐるみを抱きしめて、魂抜けている私に夫は優しかった。帰って小さなインスタントのうどんを食べて、風呂の順番待ちしている間にもつい居眠りして、もう限界だと思って風呂に入って歯磨きして寝る。


おまけ。
翌朝。目が覚めて真っ先に、昨日の問いの自分なりの答えを思いつく。すぐさま教授にメールを投げる。翌日、教授からメールが来る。内容は淡々としていたが、厳しいメールだと思った。でもそれが嬉しかった。なんだか自分は期待されているんだなと(錯覚でも)思った。そうしたらまた考えが湧いてきて、私はとうとう自分なりの切り口を見つけた。・・・と思う。
 ここから先は現在進行形の物語である。

 大学院生活とはそんなことの繰り返しである。


おまけその2。
 最近の私の座右の書はずばり「燃えよペン」。巻末の「熱血漫画家十訓」は座右の銘。

一、命がけで描け!
一、限界を超えて描け!
一、夢を見て描け!
一、自信をもって描け!
一、思い切って描け!
一、喰うのを忘れて描け!
一、よく寝てから描け!
一、明日も描け!
一、最後まで描け!
一、失敗したら 新しいのを描け!
「描け!」を「書け!」か「考えろ!」にしたら、そのまま研究者の生活です。

燃えよペン

燃えよペン

  • 作者: 島本 和彦
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2002/11/19
  • メディア: コミック


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