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第1セッション-国民を味方にするために:民主党「プラトン」記 [ブロガー懇談会関連]

 第1セッションは増田寛也岩手県知事、神野直彦東京大学教授、福嶋浩彦我孫子市長、逢坂誠二衆議院議員(前ニセコ町長)というメンバーで「地域主権の国づくり」をテーマに行われました。
 以下、私が取ったノートを元にセッションを再構成します。もしかしたら記憶違いなどもあるかもしれないことを、あらかじめご承知おきください。もしもご指摘いただけましたら、訂正します。
 ちなみに「」がついているのは、私が個人的にキーワードだと思った言葉です。()は言葉の補充です。とっても長いですので、注意です。


 まず増田知事が進行役を務めることを述べられ、パネリストは知事、市長、町長からの代表を選びましたとのこと。ただし逢坂前ニセコ町長は国会議員になってしまいましたが・・・というところで笑いを取ります。それから神野教授にも、アカデミズムな立場から意見を出していただく事が重要になると思いますというお話。
 そして自民党は小さな政府を目指そうとしている。中央だけではなく地方も公務員削減などの形でその余波をかぶろうとしている。50年間自民党は「分配の党」でやってきた。どうやって公平に分配するかに視点を置いてきた。しかしこれからは「分権」の時代だと思う。
 民主党がどのような考えを持っているかは今一つ明確ではない。ここで地方自治体からの視線を述べたい。三位一体の改革によって分権の具体的な形が見え始めた。その(改革を進めてきた)3年の評価について話し合いたい、といったことが述べられます。


 続いて福嶋市長が自治体の立場、市民の立場から政治を行っていく事の最大の意義は、「市民の意志で事業をする」ということ。そして自治体は説明責任を国に対してではなく市民に対して負う(また行う)ということであると述べられます。
 三位一体の改革によって3兆円の税源委譲がなされたことは評価できる、しかし唯一の評価できる点かもしれない。例えば国庫補助負担金は数合わせで終わってしまった。例えば生活保護の引き下げなどについては、議論になる事自体がおかしい。児童手当などの処理についてもやはり問題がある。我孫子市では障害のある子供も以前から市が負担して同じように公立保育園に入れていたことなども例に引いて、説明なさっていました。そういう国が負担してきた福祉面での補助が全廃になって、地方に移譲という形で丸投げされてしまって、さてどうなるかというお話。
 このあたりは少しお話が早くて聞き取りにくかった面もあります。BigBangさんもおっしゃっているように、資料などの形で用意してもらうともっと分かりやすかったかなあと。ただ福嶋市長は福祉の面に注目されていることは伝わってきました。

 さらに、これまでは交付金という形で国がお金を出し、その使い道についても国が評価するという形だった。これからは(どこにお金を出すか)決めるのは自治体、評価を下すのは市民であるべきというお話。
 三位一体の改革を行っている時、それでは不充分だという国民の声の後押しがなかった。自治体の運営に「市民の意志」が反映されているか、また市民にその実感があるかは重要なことだと思うというお話でした。
 私はこの「国民の声の後押しがなかった」という部分がとても耳に残りました。


 次に神野教授が、地方分権については委員会の時からアカデミズムの立場で関わってきたという立場を説明され、正しい問題提起がなされればその時点で答えの半分は含まれている。しかし正しくない問題提起をしてしまうと、ダッチロール現象(横揺れ、8の字蛇行。いわゆる迷走状態)を起こしてしまう。
 遠い国家(逆は近い地方自治体)による福祉は、グローバル化、ボーダレス化の流れの中で機能不全を起こしている。対人社会サービスは地域住民のニーズに応じて出していこうという流れ、例えば現金給付から現物給付にするなどの変化が起こりつつある。
 しかしダッチロール現象を起こした結果、税源委譲、補助金削減、分配金の見直しという手順を間違えた。例えば補助金の切り方にしても、現金手当で国民の生活を保障する(生活保護など)という部分は中央政府が責任を持つべきところである(が、地方に委せるということで切ってしまった)。

 3兆円の税源委譲を達成した事は評価できる。抜本的な税制改革を行い、国の基幹的税金は地方と半々にすべき。例えば自治事務は国と地方で半々の負担にし、国が口出しする事務は半々以上を(国が)負担すべき。
 国税として取りたいが、地域間格差が激しい税源もある(法人税など)。だから消費税のような(格差の少ない)ものを地方に移譲すべきである。

 「ほどよい政府」を目指すべきと考える。小さな政府は小さな市場という前提があって成り立つ。小さな政府は夜警国家とも呼ばれるが、コミュニティの機能が大きく生活の基本的な部分は金銭に寄らずコミュニティの中で保障されている、そういう社会でこそ成り立っていた。(これをそのまま現代日本に当てはめようとすることには無理がある)。

 神野教授のお話はアカデミックで専門用語も多く、付いていくのが大変でした。というか一部付いて行けていません。すみません。


 それから逢坂議員が、町長だったのですが国会議員に落ちぶれてしまいましたと言いつつ。
 三位一体の改革については評価すべき点がない。地方交付税について議論がされていない。文献が実感として起きていない。今は政策がマーケットメカニズムで決められている。しかし政治の価値とはそれ(マーケットメカニズム)を越えたところにあるはずだ。
 地方再編は人口規模にだけ着目されていて、行政効率は無視されている。

 今は国の曲がり角で、何を提示していかないといけないか、本当の意味の民主主義が問われている。中央集権、中央が富の分配をしているという体質を変えていきたいと願っているが、国民が応援してくれない。
 「本当の意味の民主主義」=自治を達成するために、情報公開などを進めていかないといけない。今までは社会資本整備というと新しいものをどんどん作っていくだったが、これからは旧来のものをどう維持して作り替えていくかという時代だと思う。

 日本は多様性のある国で、例えば(会場である)六本木の雰囲気は北海道では伝わらない。この多様性をどう認めるか。必要なのは霞ヶ関の質変化ではないか。
 日本の中央政党の自治に対する目は、自分たちの政策を実行する「実施部隊」というものだった。けれどもこれから必要なのは「自治」を正面から見据えて扱っていく中央政党だと思い、自治と国政との乖離を感じて、それを是正しようと国会議員になったのです。というお話。


 綺麗にオチもきまったところで、パネリスト4人がそれぞれ意見を述べ終わりました。
 これまでの三位一体の改革について一部であっても評価している人が2人、その改革を進めていく上で国民が後押ししてくれなかったと感じている人が2人、「分権」や「自治」をキーワードにして国民(市民)に対してきめこまかいニーズにあったサービスを提供していくべきと考えているのは皆さん同じ、そのあたりがキーかなと思いました。

 ここから増田知事がイニシアティブをとって、もう少し踏み込んだ話にうつっていきます。


 まず増田知事が、自治体が案を作ってそれを最後までやり通したというのは、江戸時代末期から数えて150年ぶりなんですよというお話を。増田知事は豪快で話は分かりやすく具体的な事例が多く、いかにも敏腕知事さんだなという印象を与える方です。
 それから施設整備費に手を付けた事は大きいと思う。これは今後とも継続していくという意思の表れで、第二期があるということである。つまり公共事情に踏み込んでいくための足がかりであるというお話。

 これからは施設を解体して新しい建物を建てるのではなく、メンテナンスをして寿命を延ばしていくという形が重要だろうと。
 そしてコミュニティ、自治の形について、福嶋市長に話を振られます。


 福嶋市長はそれを受けて、「自治の現場に真実がある」という話を。市民の意志で自治体を運営していく、それを実感してもらうという試みについて話されます。
 例えば市の予算を作る過程をホームページ上で徹底して公開していきたいという話を。査定の過程をすべて公開して、予算の要望に対してそのランク付けや、どの段階で切られたか(誰が不必要と判断して切ったか)なども徹底して公開していこうと考えている。それはとても大変なことなんだけれども、そうやって税源委譲の必要性を実感してもらおうと思っているというお話を。

 ネット枠で参加しているものとしては、これはとても興味深いお話だと思いました。「国民の声が後押ししてくれなかった」と言っていた方が、「じゃあダメだ(国民は分かってくれない)」と諦めるのではなく、このようなより踏み込んだ、自分たちにとっても危険を伴う(市長が自分たちが要望する予算を切ったとか一目瞭然なわけですから)情報公開を、それでもあえてやろうとする、前のめりな姿勢はとても重要なことではないかと。


 神野教授は政治的民主主義、経済的民主主義、associative democracyという歴史的な流れを説明され、アソシエイティヴをどう訳すかですが、「参加型」とでも言うべきかなということで。地方自治体を通して新しい国民の統合の形を作っていくことは政治の任務だというお話を。

 今はキズナが壊れている。子供たちの非行がある一方で、子供たちをターゲットにした犯罪も多発している。それらを克服するために、地域社会を基盤にしたコミュニティ、国ではケアできない、愛情や人間のキズナといったものを提供する社会やコミュニティが必要とされている。サービスは国が提供する(できる)。しかし愛情は国ではできない。というお話。


 逢坂議員(元町長)は多様性のある国という言葉を繰り返され、ニセコ近くの町は来年度の予算が40%減になってしまった。これを市民(町民)に納得してもらうためには、情報公開しかない。首長や職員が一軒一軒まわって説明しているんですというお話を。
 官の役割を民が担うではなく、民がすることで官では出来ないこともできるようになる。例えばニセコでは図書館を市民が運営しているが、そうすることで(いわゆるお役所仕事な)役人では出来ない金以上の価値がそこに生まれているという事例を出されました。

 また政策決定のプロセスについて、自治基本条例の必要性を説かれ、国の政策の決まり方は本当に民主的なのかという問題提起をなさいました。


 最後にもう一度増田知事が、岩手のとある村(タノハタ村)では、住民達が話し合いなどをする拠点として公民館を必要としていた。公民館というとかつてはいわゆる箱ものとして、税金の無駄遣いの典型みたいに思われているが、その村では本当に必要としていた。しかし予算がない。というわけで地域の人達が中心になって音頭を取り、各世帯5万円ずつ出し合って作った。もちろん5万円というのは少ない金額ではないので、簡単には出せない世帯もあり、そういう世帯は何ヶ月かに分けてなどきめ細かく集め方も割り振って、お金を集めて作ったという事例を。

 つまり大切なのは「透明性と説明」なのですということでした。岩手にはユイの精神というものがあるのだが、(ユイというのは、例えばある家の稲刈りを村総出で手伝ったら、今度は別の家の用事をユイをかえすという形でその家の人も入ってみんなでやる。そういう助け合いの形です)、そういうコミュニティの知恵を解決法というのが歴史の中でずっとあったのだが、ある時を境に断絶してしまったというお話をなさいました。

 だからもう一度、現代に相応しい形にしてそういう地域コミュニティを復活させようというお話なのでしょう。このあたりになってくると、相互に話が交流して話がだんだんまとまってきて明確化している感じがしました。


 あと、会場から質問も受け付けていました。あらかじめ配布されていた資料の中に、セッションごとの質問用紙が入っていて、それに書き込んで事務局の人に渡すと前まで回してもらえるというシステムです。

質問:地方分権の受け皿として、小さな自治体では力不足のところもあるのではないか?
逢坂議員(元町長):確かにある大きな問題を人口1500人の町でもできるのかという部分はある。そこは請け負う事業の規模を変えていく。大きな事業なら複数の自治体が集まって背負うなり、広いレベルでのくくりを考えていく。

質問:霞ヶ関の役人がこのような発想に乏しいのは何故か? 最近の力不足は著しくないか?
神野教授:教え子にもたくさん官僚になった者はいるが、レールが引かれている時代と左右どちらかにレールをきらなければいけない時代というものがあって、前者では官僚制が上手く機能する。しかし今は後者(だから官僚が上手く機能できていない)。
 官僚というものはHow toには長けているが、Whyにはうまく機能しない。それは政治の任務であり、官僚を上手く使いこなすということが(政治には)求められている。
逢坂議員(元町長):なり立ちの多様性を今の日本は持っているか。(逢坂議員にとっては「多様性」が大きなキーワードのようです)。
増田知事:官僚OBで政治家になる人も多く、知り合いにもこの会場にもいるけれども、彼らは選挙の時に大きく考えを変える洗礼を受ける。風向きが逆風の時に支えてくれる者の必要性を痛感する。

 それから地方選挙の時にこそ真剣に投票しないと、コミュニティの形が整わないともおっしゃっていました。これは重要な主張だと思うので書いておきます。


 ここまで読んでくださった方、お疲れ様でした。私は細かいレポートを期待されているようなので、本当に細かくノートそのままにまとめてみました。

 こうまで書くともうまとめもあんまり要らない気もしますが、前半のまとめに対して後半のまとめは「地域コミュニティの活用、復権」であるような気がします。また前半で出ていた「国民の声が後押ししてくれなかった」という実感に対して、それぞれの首長は「情報公開、透明性を高め説明を(徹底的に)進める」という答えを出しているのだと。
 ・・・これは民主党さんにとっても、非常に示唆に富んだ意見ではないかと思うのですが。

 この部分に関してはBigBangさんも詳しくまとめておられますし、安曇さんも専用ブログを作っておられますので、リテラシーの観点からも見比べをお薦めします。
 しつこいようですが以上はすべて私のノートと記憶に基づいて再構成されており、もしかしたら記憶違いもあるかもしれません。文責はすべて私にあります。間違いなど、指摘いただけましたら訂正いたします。

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