SSブログ

ネットはネット内で完結してはいけない ~ブロガー懇談会に期待すること [雑記]

 もう終わりとか思って宣言したら、書きたいことが出てくるというこの不思議。なかなか寝付けず寝たと思ったら滅茶苦茶夢見が悪く、最悪の目覚めを体験したところでふと考えがまとまったことがあるので書いておきます。・・・ちなみに夢の内容とはなんの関係もありませんが。
 私がなぜこんなにも政党とのブロガー懇談会に執着しているのか、その理由を思い出しました。

 ネット文化を大学院で学び研究しようと思っている自分の、ずっと頭から離れないテーマとして、ネットとリアルはどう結びついていくのかという問題意識があります。例えば自分が興味あるものとして「ネット世論」があるのですが、これはリアルの世論とどう違うのか。個人的見解ではネット世論はある面においてリアル世論を先取りしている面が見受けられるのですが、それは何故なのか(それ以前に真なのか)。そういうことをずっと考えています。

 さらに突き詰めて考えると、自分はネットを考える際に常にリアルを比較材料として持っていました。何故そうしているのかというと、それはつまり、「ネットのムーブメントはネット内で完結してはいけない(リアルに出て行かなくてはならない)」というテーゼ(あるいは危機意識)を持っているからなのです。
 そして私は、このテーゼを具現する一つの形としてブロガー懇談会に期待しているのでした。


 ネット内には実に多くの言論があります。ネットは論を語る際にとても適した場所です。しかしあまりに論に熱中しすぎるあまり、少なからぬ場合においてそれは暴走したり、自家撞着に陥ったり、もっと簡単に言うと「自らの足を食べるタコ」状態になってしまうことが多いようにも思われます。

 例えば日本のネット文化を語る際において無視できないものとして、2ちゃんねるがありますが、そこで最近もっとも大きなムーブメントといえば「のまネコ問題」でした(まとめサイト)。
 エイベックス社が2ちゃんねるのマスコット的存在であるモナーを、非常に似たキャラクターという形でキャラクターグッズ販売などの実利に利用しようとして問題化したこの話。エイベックスの立場説明と和解提案的プレスリリースも火に油を注ぐ状態としかならず、2ちゃんねる管理人ひろゆき氏も「のまタコ」というパロディ(おちょくり)キャラを発表したり、最終的には2ちゃんねるにエイベックス社員に対する殺人予告が書き込まれ、2ちゃんねる内ではその犯人はエイベックス社員自身ではないかという論が根強く残って、いつのまにか本題の問題はほっぽり出して答えの出ないそちらに熱中してぐだぐだになった(私見)という経緯を辿りました。
 一応、エイベックス社は「のまネコ」に関する使用料を受け取らず、ひろゆき氏はそれを寄付という形にすることを提案していますが、その文章もなんか不穏当で、まっとうに決着したとはまだまだ言い難いようです。

 2ちゃんねる住人にしてもこういう決着はたしかにしこりが残るものだと思うのです。彼らが主張したかった一番のことは、自分たちのモナーというキャラクターに対する愛着と、それが「勝手に」商売に利用されることは冒涜だと感じる感情、またそれによって自分たちのこれからの創作活動に水が差される懸念ではなかったのでしょうか。
 どうもそのあたり宙に浮いたままで、エイベックス側にも真意が伝わらないまま、殺人予告などという不名誉な問題を起こして、さらにそれをエイベックス側の仕業だと言い張るという醜態(私見)を晒したように思います。
 こういう展開を、私はまさに典型的な「自らの足を食べるタコ」と表現したいのです。・・・のまタコとは別に関係ないのですが。

 でもここで、一つの可能性を考えるのです。
 プレスリリースやメールのやり取り(一方的な送り付けが正確な気もしますが)という、結局はネット上だけでの間接的なやり取りではなく、エイベックス社側の代表と2ちゃんねる側の代表がリアルで実際に会う場所を設けて、そこで一度膝をつき合わせて話し合いをすればこの問題はもっとスムーズかつ発展的に解消したのではないかという可能性を。
 ・・・まあもちろん現実はそんな簡単なものではないとは思いますが、どうしてこのアプローチが一顧だにされなかったのかという部分には、非常に疑問を覚えます。

 2ちゃんねる代表(それをひろゆき氏一人に託すことは危険だと思いますが)は、その場で自分たちのモナーに対する愛着を語ればよかったし、エイベックス側は深読みされている程の他意はないことを、ただ自分たちは目の前にあった魅力的な素材を深く考えず利用してしまっただけであることを、率直に認めればよかったと思うのです。
 その上でお互いの立場や意見を認め合い、ある程度の信頼関係を築いた上で、発展的な折衷案を探るという方法はなかったのでしょうか。

 いやもちろん、実際に会えばすべて解決とは思っていません。世の中、そうやって何度も話し合いを重ねても決裂している事項は沢山あります。
 だけど、私が見たところ、のまネコ問題は非常にシンプルな誤解と行き違いの積み重ねであるように思います。エイベックス社はネットというものを軽視しすぎたし、2ちゃんねる側はネットというものに幻想を持ちすぎた、それだけのことであるように思うのです。それはネットという場を離れ、リアルという太陽の下に持ち出してみれば氷解する程度の誤解ではなかったかと。

 ・・・って別に、ここはのまネコ問題を語る場ではないのですが。


 同じ事が、政治の場にも言えると思うのです。
 ネット上では現在の政治に対して、様々な裏読み深読みがはびこっています。けれど現実(リアル)の政治家さんはそこまで考えていないというか、見ている方向が全然違うというのが私のブロガー懇談会に参加しての率直な感想です。
 このあたりの「全然見ている方向が違う」という基本的な誤解に気付かずに、ネットの中だけで論を積み重ねていっても不毛なだけなのではないかな、という懸念を抱いています。

 そもそも、現在の政治(家)に対して言いたいことがある人は、ネット上にもたくさんいるように思えます。じゃあ実際に目の前で言ってやればいいじゃん、というのが乱暴ですが私の意見です。ブロガー懇談会という絶好の機会まで用意してもらって、どうして「じゃあ行きます、行きたいです」と手を挙げる人が少ないのか、そこが疑問でならない。
 自分たちの「論」は本人が目の前にいたら言えない程度のものなのか、本人にぶつけてみてその結果を聞くのが怖い程度のものなのか、リアルでの反論を受けとめるだけの覚悟がないのか、聞いてみたい。

 そして政治家の側にも、ネットという場を通して表出される一般人の無知や不安というものに対して、もっと敏感であって欲しい。国民が求めている「分かりやすい説明」というのは、決してワンフレーズポリティクスではなく、もっと自分たちの欲求に対して敏感かつ細やかな「距離の近い」説明であるように思うのです。ネットという場はそれを可能にします。その可能性に気付いて欲しいし、活用もして欲しい。そのための「ネットとリアルをつなぐインフラ整備」としてのブロガー懇談会です。
 要するに、ブロガー懇談会という場を通して、政治家はネットの持つ可能性に気が付き、ネットにもっと目を向けるようになるのではないかと、私は目論んでいます。


 実際に会わないと分からないことというのはあるのです。ネットの向こう側に生身の人間がいるのだとしばしば忘れてしまう人がいるように、マスメディアの報道を通しては政治家の言葉が実感として感じられないように、リアルで会ってみないと分からないことというのはあるのです。
 でもそれはネットを否定するものではありません。ネットの論はリアルのソース(生の情報源)の上に積み重ねられるべきであり、ネットの論は建設的提案としてリアルに還元されるべきであるというのが私の持論です。つまりネットとリアルは分かちがたく、循環的に相互作用して共に発展していくのだという展望です。

 ブロガー懇談会が政治家や政党のコマーシャルに使われるという懸念もありましたが、別に大いにやればいいじゃんとも思っています。世耕議員も言われていたように、政治家側だって国民に直接言いたいことがあるのです。「テレビは掘り下げて報道をしてくれない。いつも大論的にしか物事を語らない。もうテレビに頼っていては無理だと思っている。だからネットの皆さんと情報発信をしていきたい」と世耕議員はおっしゃったのです(注:これは私の要約です)。
 この言葉には可能性を感じないでしょうか。例えそれがコマーシャルであるとしても、政治家の生の声を直接聞いて、それをネットで草の根的に広げていくということは非常に民主的であると言えないでしょうか。その上で、政治家の生の声を元に、またみんなで議論していけばいいのです。そして議論の結果をまた政治家に直接ぶつけてみればいいのです。ここには民主主義の大いなる可能性があります。

 私はだから、政党とのブロガー懇談会に期待しているのです。
 それは多分、リアルでの懇談会を土台にしないと無理なのです。でないときっと、ネットの論は自分の足を食べるタコになってしまうのです。ネットとリアルは両輪でこそ前進するのです。


以下余談。

 私は実際に民主党本部に行ってみて、そのリソースの小ささというものを実感しましたし、この党が自民党に対抗して政権を取るには越えなくてはならない壁がいくつもあると思いました。(でもそのリソースのなさは、ネットを使うことでかなり補うことが出来る種類のものでもあります。)
 現在、ネットには肯定否定合わせて多くの民主党論がありますが、どっちもちょっと幻想見過ぎているかなーというのが素朴な実感です。ええと、率直に言って民主党というのはそこまで巨大な党ではない。まあ一度行っただけで偉そうに語るなというのも最もですが、あの本部の入っている雑居ビルの様相と、民主党議員さんのフランクというべきか大学サークルというべきかな雰囲気を実感すると、なんかもうそこまで夢見るほどのものではないよと言ってしまいたくもなるのです。
 むしろあの党は今、支えてくれる人を切実に募集しているので、建設的助言をすればいくらでも受け入れる素地はある党ですよと。そこに民主党の(失礼ながら)唯一の可能性がある、というのが私の見立てです。

 民主党だけでは不公平なので自民党も書いておきますが、今回の懇談会に出席して思ったことは、世耕議員はとても有能な実務家であり、わりと理想家な側面もある。根本議員は誠実な方である。中川秀直議員は、えーとすみません、私の印象では首相の器ではない。んなこと言うからには根拠も書いておきますが、人の話を聞くのに煙草ふかしたり視線が退屈そうだったり、身内に障害者を抱えていて今後の政策に不安を訴える人に対しての第一声が「施設にも税金は使われている」はかなりマズイ(参照記事)。本音でもマズイというか、物事には言い方があるというか、とにかく下手をうったなと思いました。新しい政調会長に就任した直後、お忙しい最中にいきなり引っ張り出されてきて、ご本人としてもかなり困惑する側面もあったかと思うのですが、そういう場でこそ人間の本性が出るとも言います。

 百聞は一見にしかずと言います。この言葉は今、ネット時代にこそ重要になってくるのではないでしょうか。ネットでの百聞とリアルでの一見、それは多分同価値なのです。だから、ブロガー懇談会で直接得られるものは少しでも構わないのです。
 その一見を元に、ネットでは百聞が展開されるのですから。それこそがネットの醍醐味、一見を百聞に増幅してさらに新たなる一見に還元する、そうやってネットとリアルを両輪に物事が発展的に解決していくこと。私はそれを望みます。


とりあえずの民主党ブロガー懇談会感想
とりあえずの自民党ブロガー懇談会感想

民主党ブロガー懇談会:前記・確認
民主党ブロガー懇談会:前記2・口火を切るまで
民主党ブロガー懇談会:憲法改正問題に関して
民主党ブロガー懇談会:ネットと政治に関して-先端vsド素人
民主党ブロガー懇談会:食い下がりで見えた沢山のもの
民主党ブロガー懇談会:まとめと私の考えるネットジャーナリズム

自民党ブロガー懇談会:質疑応答・コンテンツ、バイク、ニート
自民党ブロガー懇談会:中川議員の話、女系天皇問題
自民党ブロガー懇談会:質疑応答・障害者支援、世襲と公募
自民党ブロガー懇談会:質疑応答・IT教育、懇談会の意義、女性
自民党ブロガー懇談会:サンドイッチ問題?と世耕議員との一問一答
自民党ブロガー懇談会:まとめと2つの提案

自民党メルマガ/ブログ作者との懇談会:参加談一覧
ブロガー懇談会:残された宿題
ネットはネット内で完結してはいけない ~ブロガー懇談会に期待すること

ブロガー懇談会:トラックバックセンター


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。