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「電車男」:他人事じゃない。 [映画]

 この映画を語る前には、まず自分の立ち位置をあきらかにしておくべきだという不文律のようなものが、なんとなく存在する気がするので、まずそこから。
 私は2ちゃんねるについては、興味のある板、スレなど普通に閲覧しています。でも滅多に書き込みはしません(怖いから)。ニュー速やVIPなどで行われる「祭り」に参加することもない、いわば非アクティブなユーザーです。
 この電車男に関しては存在自体は知っていましたが、該当のスレッドもまとめサイトも読んだことはなく、書籍化されたものも読まず、つまりまったく先入観や前知識のない状態で映画を見に行きました。あ、映画の公式サイトは見ていましたけど。

 で、感想。公式サイトを見て本当にぎりぎりまで撮影していたのを知っていたため、大丈夫かと思いましたが普通に面白かったです。テレビの連続ドラマなみのスケジュールで撮ったってことを知っていたからかもしれませんが、これがTVドラマ(2時間のスペシャルもの)であれば、かなり傑作の、出来のいい作品と言えるだろうなと思いました。・・・これでは褒めているのかけなしているのか分かりませんが。面白ければ、まあいいんじゃないですかね?

 そしてさらに話を進める前に、もうちょっと自分の立ち位置について語っておきます。
 私はオタクです。ええ、そりゃもう立派なオタク人種ですとも。前日のメタルサーガについて熱く語ってしまったあたりにその片鱗が表れているかと思いますが、ゲームオタクであり本・漫画オタクであり映画オタクであり、あと車とネットとその他いろいろ・・・。なにより一番のオタクたる証明は、大学入学時にプレゼミで自己紹介をしたあと、コミケに毎年通っているようなオタク娘さんに手を取られ、「あなたは私と同じ人種だとすぐ分かった!」と言われてしまったことでしょう。はっはっはー。
 オタクの定義というのは難しいものですが、このようにオタクというのは空気で分かるものなのです。オタクはオタクに生まれつく。よく外見がぼさぼさの長髪だとか化粧をしてないとか服装の趣味が・・・などと言われますが、どんな小ぎれいな服装をしていてもオタクはオタクですよ。前述のコミケ娘さんだって綺麗な淡いブルーのアイシャドウをひいて、こざっぱりしたちょっとクラブ系の服装のお洒落な女の子でした。でも、オタクなんです。

 その点、この映画のオタク「電車男」を演じた山田孝之さんは本当に素晴らしかった。予告やポスターに出ているいわゆる秋葉系の服装は、映画が始まって結構すぐに、ネットからのアドバイスで髪を切り、服を買い、普通の小ぎれいな青年へと変わるのですが、それでも消せないオタクオーラ。むしろ普通の服装になってからのほうが、「こんな普通の格好をしているけど、でも普通になれないオタクな俺」オーラがびんびんしていて、いたたまれなさ半分笑えるの半分(まあ私の場合は自虐的な笑いです)。本当にすごい役者さんだと思いました。
 オタクというのは・・・妄想たくましく、自意識過剰です。そんなだから一つの趣味にのめり込むことも出来るのです。ですが、一つの趣味を極めているからといって必ずしも妄想たくましく自意識過剰かというと、そうでもないところが世の中の面白さ。そういう人は「趣味人」であって「オタク」ではありません。

 妄想たくましく自意識過剰で生きていくのは辛いことです。だからオタクは内に籠もり、人の目を異常に気にする。だけど、髪にも服装にも気を使わず、「そんなことには興味ないよ、どうせ無駄だし」といじけます。気にするからこそ、気を遣わない。気を遣った結果、失敗するのが怖いからです。失敗する自分の姿をやる前からすでに見てしまうんです。それが妄想たくましく自意識過剰であるということ。
 だから、人と付き合うなんてとんでもない、まして異性となんて。でも興味はあるんです、普通に。性欲だってある。だけど、妄想たくましく自意識過剰。だからそれは屈折した形で生身ではなく漫画やアニメのキャラクターに向かう・・・まあ、これはちょっと短絡的な分析ですけど。

◆以下山場バレにつき注意◆

 そんなオタクな電車男が自分の殻を破り、内に籠もるのをやめ、傷つくことを恐れず(というか気にする余裕もなく)、エルメスさんに向かって告白するラストシーンは本当にもうぐしゃぐしゃで、格好悪くて、多分傍目に見ると気持ち悪くて、だけど必死で、本当に本当に一生懸命で・・・。泣きました。私は本や映画で泣くってことはないんですが、心の中では泣きました。だって他人事じゃないから。
 普通の人にとっても、告白っていうのはそういうものだと思うのです。ただオタクだから、その格好悪い部分がより強く誇張されて出てくるだけで。やっぱり、他人事じゃないんですよ。
 そしてそれを受けとめるエルメスさんの優しさに、救われたような気持ちになりました。この映画のエルメスさんは、どう見ても最初から電車男に興味いっぱいで、「これって実は逆ナンパの話じゃないの?」と思ってしまうほどなんですけど。まあ、そんな女性と出会えたということがすでに恋愛の始まりであり、奇跡であったんでしょう。普通の人同士の恋愛だって、相手に興味を持てるかということがまずあって、そして成就のためには相性というものが重要なんですから。◆終わり◆

 初日に見に行ったので、広い劇場でしたが結構お客さんはいっぱいで、意外と年配の方もいました。あちこちで出てくる2ちゃんねるネタ(のかなり無理矢理な映像化)に私はこっそり笑いましたが、劇場の雰囲気的には「??」だったのが結構意外でしたね。多分お客さん達は「不器用な男性の純愛映画に、ちょっと変な掲示板のスパイスを利かせた」程度の認識だったんじゃないでしょうか。2ちゃんねるの知名度ってまだまだその程度なんだなーと、これは意外でした。
 なお、エンドロールが終わってからも、少し続きがあります。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、私はあれは「恋の伏線」と「ネタ説」のダブルミーニングだったのだと思います。

映画公式サイト:http://www.nifty.com/denshaotoko/

「電車男」 2ちゃんねるのまとめサイト:
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Aquarius/7075/


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