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金銭以外の報酬を与えるという価値観:神の口から出る一つ一つの言葉 [雑記]

 ネット上には実に様々な有用で価値ある情報が詰まっています。実用的なものから知的好奇心を刺激されるもの。ささやかな疑問に答えてくれるものから、非常に娯楽性に富んだ遊びまで。しかもそのほとんどが無償で利用できるのです。

 それはそれで素晴らしい事なのですが、そういったコンテンツを個人で提供している場合、どうしても続けていくためのモチベーションというものが保ちにくくなっていることも確かです。「人はパンのみにて生くるにあらず」なのですから、パン以外にまったく何もなしで生きられるほど強くもないのです。なにせ元々の言葉(聖書)にしてからが、その後に「神の口から出る一つ一つの言葉で生きるのである」と続くのですから。

 さて、ネット上でこの「神の口から出る一つ一つの言葉」にあたるものはなんでしょうか。私はそれは、閲覧者のささやかな一言にあるのではないかという気がします。


 この「一言」の形には色々あって、分かり易いところではSo-netブログのnice!もそうでしょうし、コメント欄に何か(褒め言葉を)書くこともそうでしょう。他にもランキングとかweb拍手とか、場合によってはアフィリエイトも、ネット上では実に様々な「一言」の送り方が工夫されています。それは同時に、いかに「一言」を求めているサイト運営者が多いかということを示してもいるような気がします。
 実際、私としてもサイトを運営していた頃は、無言で通り過ぎていく100人の閲覧者より、一言でも「よかったよ」と言ってくれる1人のためにせっせとコンテンツを作っていました。・・・まあ今だから言える話なのですが。
 ブログはもっと軽く、自分の書きたい事を書いてやろうというスタンスでやっていますが、それでも何か言ってもらえると嬉しいのは確かです。

 ただ当時から気になっていた事なのですが、閲覧者側にはこの一言の重みっていうのはどれくらい伝わっているのかな、というのがあって。それはもちろん、自分が閲覧者側、コンテンツ利用者側になるときも気をつけていたことなのですが。
 「一言」を送る事には手間がかかります。ボタンを一つ押すだけでも、それを手間と感じてしまうのが人間というものです。そしてまた我々には「無料だし」という思いはあっても、金銭以外の報酬を与えるという価値観が充分に育っているとは言い難い・・・ような気がします。早い話、送信ボタンを押す前にそれを手間と感じる以上に、「なんでそれをしてやらないといけないんだ」という本音はどこかにないでしょうか。
 私としてはネットは無償の余力と善意によって成り立っている世界であって欲しいのですが、そのためにも「金銭以外の報酬を与えるという価値観」の醸成は必須だろうなと思ってきました。

 例えば2ちゃんねるには実に多くの職人や、どうみてもその道のプロじゃないと書けない情報をリークしてくれる人がいますが、あそこには「GJ」や「激しく同意」「ワロタ」という一言を気軽に送るという文化が初期から既に育っていたのです。私はそのことと、2ちゃんねるに職人が集まることとは無縁ではないと思っています。

 閲覧者にとって、有用なコンテンツを与えてくれる提供者は「神」ですが、どんなにいいものを作っても使ってくれる人がいないと無意味であるように、コンテンツ提供者にとっても閲覧者は神です。そして彼らは「神の口から出る一つ一つの言葉によって生きる」のです。


 あとの問題は、じゃあ金銭以外の報酬、「一言」はどのような形を取るべきかということがあります。よかれと思って書いたコメントが相手を傷つけてしまったということはあり得るでしょうし、そうなると今度はコメントを書く技術というものも考えないといけません。・・・ちなみに、ここで言うコメントは「金銭以外の報酬となる」コメントですから、批判や反論は除外しています。もちろんそういうものも、それはそれで必要だとは思うのですが、同時に「神の一言」になりうる言葉・コメントも必要だと思うのです。
 2ちゃんねるでも「GJ」レスがあまり大量に続くと、今度は「うざい」という意見が出てくるものです。私もちょっとだけ職人仕事をしていたことがありましたが、GJレスは5つくらいもらえたら嬉しいけど、10も20もは要らないと思っていましたので、そこら辺は空気を読む技術が要るわけです。
 他にも、例えばランキングにしても、サイト運営者はそれを励みにしていても、閲覧者側はどうしても「あざとい」と思ってしまって価値観が一致しないだとか。そもそも別にコメントいらないし、とか。いろいろ研究、というか模索の余地は残っています。

 しかし、ともあれ、まず必要なのは「金銭以外の報酬を与えるという価値観」なんだろうなと思うのです。
 どうやったらその価値観を作っていけるのか。それはやっぱり、皆が一度はサイト運営者になってみて、「一言」をもらえたらどんなに嬉しいかを実感し、さらに他の人もそうだろうという想像力を身に付けることで、地味に広がっていくものかなという気がします。
 今のWeb2.0と言われる技術発展、ブログやデーサイが作られて広がって、「誰もがサイトを持つ時代」になったとしても、その陰にはこのような価値観・文化の熟成がなければ、それはバブルのように膨らんで、ある時はじけてスラム化して終わってしまうような気がします。

――人はパンのみにて生くるにあらず。神の口から出る一つ一つの言葉によって生きるのだ。
――サイト運営者は金銭にて生くるにあらず。閲覧者の口から出る一つ一つの報酬によって生きるのだ。

なんてね。


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